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001:雨 [短歌]

我が想ひ君の想ひが重なりて
 そぼ降る雨も冷たざりけり


 ふと窓の外に目をやると、朝から
 降り続いていた雨がようやく雨脚を弱め、
 そぼそぼと降り始めている。
 貴方が帰らなくてはならない時間が刻一刻と
 迫っているのにお互いに気付かないふりを
 して指先で指先に触れたり頬を撫でたり
 している。
 この雨の中、駅まで見送るよって言ったら

 「君に風邪をひかせるわけにはいかないから」

 っていつもの優しい声で囁いてくれるの。
 でもね。貴方がこんなにも私を慈しんで
 くれるから私がこんなにも貴方を愛して
 いるから、今降っている春雨はちっとも
 冷たくないのよ。
 むしろ燃えるように熱い私の想いを、
 丁度良く冷ましてくれるかも
 しれないじゃない?
 駅までの道のりを一緒に歩きたいだけ
 だから、ね、御願い。
 貴方はきっと私の我が儘を聞いてくれる。
 そして必ず別れ際に「気をつけてね」って
 言ってくれる。
 そんな貴方が大好きだよ。

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